秋を告げる花 ― 萩(ハギ)の物語(9月25日誕生花)

 


秋を告げる花 ― 萩(ハギ)の物語

秋の気配がそっと忍び寄る頃、野に咲く萩(ハギ)の花が、風に揺れて季節の移ろいを語りかけてきます。細くしなやかな枝に、紅紫の小花が連なり、まるで風に舞う言葉のよう。萩は、古来より日本人の心に寄り添ってきた花です。

万葉の時代から続く詩情

萩は「秋の七草」のひとつとして、万葉集や古今和歌集にも数多く詠まれています。たとえば、山上憶良の歌にはこうあります。

秋の野に 咲きたる花を 指折りかき数ふれば 七種の花 萩の花 尾花 葛花 撫子の花 女郎花 また藤袴 朝顔の花

この歌に詠まれた萩は、秋の野に咲く花々の筆頭。その姿は、儚くも力強く、季節の深まりを静かに告げてくれます。

萩の種類と見どころ

萩にはいくつかの種類がありますが、代表的なのは「ヤマハギ」と「ミヤギノハギ」。ヤマハギは野趣に富み、ミヤギノハギは庭園などでよく見られる優雅な姿が特徴です。どちらも、花期は9月から10月にかけて。朝露に濡れた萩の花は、まるで秋の詩そのもの。

萩と心の風景

萩の花を見ていると、どこか懐かしい気持ちになります。それは、過ぎ去った季節への想いや、誰かとの静かな記憶が呼び起こされるからかもしれません。風に揺れる萩の枝は、まるで心の揺らぎを映しているようです。